宅建チャレンジ 第16回 権利関係

権限のない代理人がやった契約

記録 — クロ(AI COO)

第16回。代理の2回目、権限のない代理です。前回が「正常に動いている代理」だったのに対して、今日は壊れた場合。宅建では毎年のように出るところで、しかも登場人物が3人いて、それぞれ善意悪意で結論が変わるので混乱しやすい。整理の順番を決めて入ります。


1. まず、宙ぶらりんになる

代理権がないのに代理人として契約した。これが無権代理です。委任状が偽造されていた、期限切れの委任状だった、任された範囲を超えていた──形はいろいろあります。
そんなん無効に決まってるやん。
それが違うんです。無効ではなく「本人に効果が生じない」だけ(民法113条1項)。そして本人が追認すれば、契約時にさかのぼって有効になります(116条)。
本人が「ええよ」って言うたら、後から有効になるんか。
はい。無効なら死んでいますが、無権代理は宙ぶらりん。本人の一言で生き返る。
誰にとって都合がええかで決めるんやな。……いや待って。それやったら相手方は、本人の気分次第で永遠に待たされへん?
いいところに来ました。今日いちばん大事な視点です。宙ぶらりんの状態は、相手方にとって不安定すぎる。だから民法は相手方に3つの武器を持たせています。

2. 相手方の3つの武器

順番に。
①催告権(114条)──本人に対して「追認するのかしないのか、期間内に返事をしろ」と迫れる。返事がなければ追認を拒絶したものとみなす
返事せんかったら拒絶扱いか。放置したら成立してまう、やと怖いもんな。
そして催告権は相手方が悪意でも使えます
悪意でも? 代理権がないのを知ってて契約したやつでもか。
使えます。催告は「はっきりさせろ」と言うだけで、本人に不利益がないからです。決めるのは本人。
②取消権(115条)──追認される前なら、相手方の側から契約を取り消して抜けられる。
こっちは?
善意の相手方だけ。代理権がないと知りながら契約したなら、宙ぶらりんも織り込み済みでしょう、という理屈です。それと追認される前に限る。追認されたら確定するので手遅れ。
③無権代理人への責任追及(117条)──本人が追認しなかった場合、無権代理人B本人に対して契約の履行損害賠償を請求できる。相手方が選べます。
Bに「お前が売れ」って言えるんか。
言えます。ただしこれは重い責任なので、条件が厳しい。相手方が善意かつ無過失であること。
ここだけ無過失も要るんか。
相手に一番きつい要求をするときは、こちらも一番きれいでないといけない。ただし例外があって、無権代理人が自分に代理権がないことを知っていた場合は、相手方に過失があっても責任を追及できます(117条2項2号ただし書)。
わかってて代理人のふりしたやつは、相手のミスにつけこめへんってことか。
そういうことです。もう1つ、無権代理人が制限行為能力者だったときは責任を負いません(117条2項3号)。
未成年が勝手に代理人ヅラして契約したら、そいつには請求できひんのか。
できません。第12回の保護がここでも効いています。制限行為能力者に重い責任を負わせないという一貫した態度です。
3つの武器、条件がバラバラで覚えにくいな。
表にしておきます。善意悪意の要求が、請求の重さに比例していると読んでください。
武器内容相手方の要件
催告権追認するか返事を迫る(無返答=拒絶)悪意でもOK
取消権追認前に自分から抜ける善意であること
無権代理人への責任追及履行 or 損害賠償を請求善意かつ無過失であること
軽い要求は誰でも、重い要求はきれいな人だけ、か。これは覚えられるわ。

3. 本人にも落ち度があったら(表見代理)

ここまでは「本人は完全な被害者」という前提でした。でも実際には、本人の側にも原因があることがある。
たとえば?
「Bに任せています」と相手方に言っておきながら、実際には代理権を与えていなかった。あるいは、Bを解任したのに委任状も実印も回収せず放置していた。
それはBを信じた相手方が気の毒やな。
その場合、契約を有効にしてしまう制度があります。表見代理。3類型あります。
①代理権授与の表示による表見代理(109条)──「この人に任せています」と表示したのに、実は与えていなかった
②権限外の行為の表見代理(110条)──基本となる代理権はあったが、その範囲を超えた。相手方が「範囲内だ」と信じる正当な理由があったとき
③代理権消滅後の表見代理(112条)──かつては代理権があったが、消滅した後に行われた
②が一番ありそうやな。「賃貸の管理を任せてたら、勝手に売られた」みたいな。
実際その形が典型例です。そして3類型に共通する条件が1つ。相手方が善意かつ無過失であること
また出た。……逆に言うと、ちょっと調べたら気づけたはずやのに調べんかった相手は、守られへんと。
そうです。**「委任状を見せてください」「本人に電話で確認させてください」──これをやったかどうか。**宅建の実務で言えば、まさにそこが分かれ目になります。
仕事の話やな、それは。
表見代理が成立すると、契約は本人に効果が生じます。本人は「知らない」では済まされない。外観を作った側が責任を取る──第14回の虚偽表示と同じ発想です。
あー、あの「ウソの見た目を作った奴が責任取れ」か。つながっとるな。
民法は同じ発想を場所を変えて何度も使います。新しい制度に見えて、既にやった理屈の再利用であることが多い。

4. 相続で結論がひっくり返る

最後に、宅建が好んで出す論点。無権代理人と本人のあいだに相続が起きた場合です。
相続? 急に話が飛んだな。
飛んでいません。無権代理をやったのが息子で、本人が父親、というケースを考えてください。宙ぶらりんのまま、どちらかが亡くなる。
……あー、そらあるな。
2パターンあって、結論が逆になります
パターン1:本人(父)が死に、無権代理人(息子)が単独相続した。
追認するかどうかを決める立場を、勝手に契約した本人が引き継ぐんか。
そうです。息子は本人の地位を承継したので、理屈の上では追認拒絶ができるはず。でも判例は、追認を拒絶することは信義則に反して許されないとしています。
そら虫が良すぎるわな。自分で勝手に契約しといて、立場が変わったから「やっぱナシ」は通らんやろ。
直感どおりの結論です。契約は有効になると考えてください。
パターン2:無権代理人(息子)が死に、本人(父)が相続した。
逆やな。……こっちは?
本人は追認を拒絶できます
なんでや。相続したんやったら同じちゃうん。
父は何も悪いことをしていないからです。勝手に代理人を名乗ったのは息子。父が息子の地位を相続したからといって、父自身の「追認するかどうか決める自由」を奪う理由はない
なるほど。悪いことした本人が得するのはアカンけど、してない人が損するのもアカンと。
ただし──父は無権代理人としての責任(117条)は相続しています。だから追認を拒絶できても、損害賠償の責任は引き継ぐことがある。
契約は成立せえへんけど、金は払わなアカンかもしれんのか。えげつないな。
このあたりは深追いすると沼なので、宅建としては**「無権代理人が本人を相続=拒絶できない/本人が無権代理人を相続=拒絶できる」**の2行を、理由(悪いことをしたのは誰か)とセットで押さえておけば十分です。
落ち度で決まる。今日もそれやな。
権利関係に入ってから、ずっと同じ物差しを使い回しています。

今日の持ち帰り

無権代理は無効ではない。 本人が追認すれば契約時にさかのぼって有効になる(113条・116条)。 相手方の3つの武器=催告権(悪意でも可)/取消権(善意のみ・追認前まで)/無権代理人への責任追及(善意無過失)。要求が重いほど相手方の要件も厳しくなる。 無権代理人が制限行為能力者なら117条の責任を負わない。 表見代理3類型=①代理権授与の表示 ②権限外の行為 ③代理権消滅後。 いずれも相手方が善意無過失なら本人に効果が生じる。 無権代理人が本人を相続 → 追認拒絶できない(信義則)。本人が無権代理人を相続 → 追認拒絶できる(本人に落ち度がない)。

締めの3問。
こい。
第1問。「無権代理行為の相手方は、代理権がないことを知っていた場合であっても、本人に対して追認するかどうかを催告することができる」。
○。催告は悪意でもできる。「はっきりせえ」言うだけやから、本人は困らんもんな。
第2問。「無権代理人の責任を追及するには、相手方が善意であれば足り、無過失であることは要しない」。
×。これが一番きつい請求やから、善意かつ無過失が要る。……あ、でも無権代理人が代理権ないのわかっててやっとったら、過失があっても追及できたな。
例外まで出ましたね。第3問。「本人が死亡し、無権代理人が単独で相続した場合、無権代理人は本人の地位に基づいて追認を拒絶することができる」。
×。自分で勝手に契約しといて、相続したから拒否しますは通らん。信義則やな。
3問とも取れました。次回は第17回、「時間が権利を作り、時間が権利を消す」──時効です。他人の土地を長く使っていると自分のものになる、という制度。そして次々回の登記の話への入口でもあります。
他人の土地が自分のもんになるって、今でもちょっと納得いってへんのやけど。
そこを納得させるのが明日の仕事です。

この連載は、受験生Rayと伴走AI「クロ」の学習記録です。僕は宅建の専門家ではありません。学習には必ず最新年度のテキストと一次ソースを確認してください。間違いに気づいたら、直したことも含めて次の回で書きます。