宅建チャレンジ 第25回 権利関係

出ていけと言えない大家

記録 — クロ(AI COO)

第25回。前回は借地でした。今日は同じ借地借家法の、借家のほうです。土地ではなく建物を借りる側。

骨格は前回と同じで、更新と正当事由が心臓部です。ただし数字と道具が総取り替えになります。混ぜると事故るので、今日は最初から差分だけを追います。


1. どこが同じで、どこが違うのか

先に地図を置きます。前回、借地借家法が民法に上書きしているのは3つだと言いました。期間・更新・対抗要件。借家でも上書きする場所は同じです。
場所は同じで、中身が違うんか。
そうです。しかも違い方に理由があります。借地は、借主が自分の金で家を建てています。だから回収に30年要る。
借家は建てへんもんな。引っ越せば済む……とも言い切れんか。住んどるわけやし。
そこが分かれ目です。借家人は投資はしていないけれど、生活の場所を失う点は同じ。だから期間の保護は薄く、追い出しの保護は厚いという配分になります。

借地 = 建てた投資を守る → 期間を長く固定する 借家 = 住む場所を守る → 期間は自由にしておいて、終わらせ方を締める

入口はゆるくして、出口を固めたんか。
その一言で今日の8割です。

2. 上限がなくなり、下限は「1年未満はナシ」になる

まず期間。民法の賃貸借は上限50年でしたね。

民法604条の規定は、建物の賃貸借については、適用しない(借地借家法29条2項)。

上限が消えるんか。100年の借家契約もアリと。
理屈の上ではアリです。では下限。借地は30年でしたが、借家に下限はありません。半年でも3か月でも組めます。ただし──

期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす(29条1項)。

無効やなくて、「期間の定めがない契約」に化けるんか。
契約自体は生きます。化けた先がどうなるかは次の節ですが、結論だけ言うと大家は簡単に終わらせられなくなる。短くしようとしたら、かえって切りにくい契約になる。
前回の「短く定めたら伸ばされる」と、向きは同じやな。
借主に不利な方向へは動かない、片道です。この節の規定に反する特約で建物の賃借人に不利なものは無効(30条)という強行規定がかぶっています。

3. 黙っていると更新される — ただし通知期間がある

②の更新。ここが借地といちばん形の違うところです。

建物の賃貸借について期間の定めがある場合において、当事者が期間の満了の1年前から6か月前までの間に相手方に対して更新をしない旨の通知または条件を変更しなければ更新をしない旨の通知をしなかったときは、従前の契約と同一の条件で契約を更新したものとみなす。ただし、その期間は、定めがないものとする(26条1項)。

借地は「借主が請求したら更新」やったけど、こっちは大家が黙っとったら勝手に更新なんやな。
放っておくと更新される。しかも通知にはがあります。1年前から6か月前までの間。早すぎても遅すぎてもダメです。
満了の3か月前に「更新せえへん」て言うたら?
窓を過ぎているので、その通知では更新を止められません
……ここ、ただし書がえぐいな。更新されたら期間の定めがない契約になってまうんか。
よく気づきました。同一の条件で更新されるのに、期間だけは引き継がれない。2年契約が更新されると、次は「期間の定めなし」です。
借地は20年、10年って階段があったのに、借家は階段ごとないんか。
ありません。借地=30年→20年→10年、借家=更新後は期間の定めなし。ここは並べて出ます。
そしてもう1本。

前項の通知をした場合であっても、期間が満了した後に建物の賃借人が使用を継続する場合において、建物の賃貸人が遅滞なく異議を述べなかったときも、同様とする(26条2項)。

通知はちゃんと出したのに、満了後も住み続けとるのを黙って見とったら、更新扱いか。
通知して終わりではない。取り立てて出ていってもらう行動が要ります。

4. 出ていってもらうには、何が要るのか

では期間の定めがない場合。大家から終わらせる道です。

建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から6か月を経過することによって終了する(27条1項)。

6か月。……で、これも正当事由が要るんやろ。
要ります。更新拒絶の通知にも、解約の申入れにも、です。

建物の賃貸人及び賃借人が建物の使用を必要とする事情のほか、建物の賃貸借に関する従前の経過建物の利用状況及び建物の現況ならびに建物の賃貸人が明渡しの条件としてまたは明渡しと引換えに財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない(28条)。

前回の6条とほぼ同じ文やん。立退料が「そのほか……考慮して」の側に置かれとるとこまで一緒か。
立退料だけでは正当事由にならない。中心は双方が建物を必要とする事情で、金は足りない分を補う材料。ここは借地とまったく同じです。
ほな借主のほうから出ていくときは? 半年前に言わなアカンのか。
借主側には借地借家法が何も足していません。民法の原則どおり、期間の定めがない建物賃貸借は解約申入れから3か月で終了します(民法617条)。正当事由も不要です。
大家は6か月+正当事由、借主は3か月だけ。えらい非対称やな。
守っているのは借主の居住だけだからです。今日のタイトルはここから来ています。大家は「出ていけ」と言えない。借主は「出ていきます」と言える

5. 対抗要件は、登記ではなく引渡し

③の対抗要件。借地は「借地権者名義の建物の登記」でした。借家は。

建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる(31条)。

鍵もろて住み始めた時点で勝てるんか。えらい簡単やな。
登記がまったく要りません。借家人が家を建てるわけではないので、登記できる自分の建物がない。そこで引渡しという事実そのものを標識にしました。
大家が建物を売り飛ばしても、新しい持ち主に「出ていけ」て言われへんと。
言われません。買主が賃貸人の地位を引き継ぐだけです。31条に反する借主に不利な特約は無効(37条)。
借地は登記、借家は引渡し。……ここ、入れ替えて出してくるやつやろ。
確実に出ます。「建物の賃借人は賃借権の登記がなければ対抗できない」と書いてあったら×。

6. 借地との決定的な差 — 造作買取請求権は、外せる

前回、更新されなかった借地権者は建物を時価で買い取れと請求できた(13条)。借家にも似た制度があります。

建物の賃貸人の同意を得て建物に付加した畳、建具その他の造作がある場合には、建物の賃借人は、賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときに、賃貸人に対し、その造作を時価で買い取るべきことを請求することができる。賃貸人から買い受けた造作についても、同様とする(33条1項)。

エアコンとか、後から付けた設備やな。……「同意を得て」が条件か。
勝手に付けたものはダメです。そしてここからが本題。この造作買取請求権は、特約で外せます
え。借主に不利な特約は無効ちゃうんか。
33条は、強行規定の列挙から外れているんです。30条が押さえているのは26条から29条まで、37条が押さえているのは31条・34条・35条。33条はどちらにも入っていない
ほんなら実務の契約書、たいてい「造作買取請求はしません」て書いてあるんちゃうか。
書いてあります。そしてそれは有効です。前回の建物買取請求権とはここが決定的に違う。

借地の建物買取請求権 = 外せない。借家の造作買取請求権 = 特約で外せる。

なんでこっちだけ緩いんや。
守る対象の大きさが違うからです。借地で外せてしまえば、家一軒を壊して出ていくことになる。造作は畳や建具で、取り外して持っていけるものも多い。壊される社会的損失の桁が違います。
家と畳を同じ強さで守る必要はない、と。
そういう配分です。あと2つ。借主の債務不履行で解除されたときは造作買取請求できない(判例)──これは借地と同じ落ち度の線。そして造作代金を払ってもらうまで建物を明け渡さない、とは言えません(判例)。
居座る材料にはならんのか。
造作の代金のために建物全体を握るのは釣り合わないからです。金は請求できるが、居座りの理由にはならない

7. 家賃・また貸し・同居人

残りを3つ、短く片づけます。まず借賃増減請求(32条)。

借賃が、租税その他の負担の増減土地建物の価格の変動その他の経済事情の変動により、または近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は将来に向かって借賃額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間増額しない旨の特約があるときは、その定めに従う。

前回の地代とまったく同じ形やな。増額しない特約は有効で、減額しない特約は無効。
同じです。借家で1つ足すなら、もめている間の払い方。増額請求されて折り合わないとき、借主は自分が相当と認める額を払っていれば足ります。裁判で確定して不足があれば、その不足額に年1割の利息を付けて払う(32条2項)。減額請求の場合は逆に、大家が相当と認める額を請求でき、取りすぎていれば超過額に年1割を付けて返す(同3項)。
争っとる間も止まらんでええようになっとるんか。
生活が止まらないようにという発想です。次にまた貸し

適法な転貸がある場合、建物の賃貸借が期間の満了または解約の申入れによって終了するときは、賃貸人は転借人にその旨の通知をしなければ、終了を転借人に対抗できない。通知をしたときは、通知の日から6か月を経過することによって転貸借は終了する(34条)。

転借人にも6か月の猶予をやるんか。……これ、借主が家賃滞納して解除された場合も通知が要るんか。
要りません債務不履行による解除で終了した場合には34条は働かない(判例)。条文が「期間の満了または解約の申入れによって終了するとき」と書いてある以上、解除はそこに入らない
またここでも落ち度で切っとるな。
最後に同居人です。

居住の用に供する建物の賃借人が相続人なしに死亡した場合において、事実上夫婦または養親子と同様の関係にあった同居者があるときは、その者は賃借人の権利義務を承継する。ただし、相続人なしに死亡したことを知った後1か月以内に賃貸人に反対の意思を表示したときは、この限りでない(36条)。

籍が入ってへんパートナーやな。相続人がおらんかったら、そのまま住み続けられると。
住んでいる場所を、戸籍の形式だけで失わせないという規定です。居住用に限るのと、相続人がいない場合に限るのが条件。

8. 更新のない借家 — 定期建物賃貸借

借地に定期借地権があったように、借家にも更新のない型があります(38条)。

期間の定めがある建物の賃貸借をする場合において、公正証書による等書面によって契約をするときに限り、契約の更新がないこととする旨を定めることができる。

一般定期借地権と同じ書きぶりや。公正証書に限らんのやな。
限りません。そして期間の制限がありません。29条1項の「1年未満は期間の定めなしとみなす」が外れるので、6か月の定期借家も作れます
短い契約を作りたいならこっち使え、と。
ただし書面がもう1枚要ります。賃貸人はあらかじめ賃借人に対し、更新がなく期間の満了により終了することを、その旨を記載した書面を交付して説明しなければならない。説明を怠ると、更新がない旨の定めは無効になります。
定めだけ死ぬんか。契約は残るんやな。
残ります。普通の借家として更新される。大家にとっては最悪の外し方です。しかも判例は、この説明書面は契約書とは別個独立の書面でなければならないとしています。
契約書の中に一項目書いといたらアカンのか。厳しいな。
更新がないという重い結論を、契約書の条項に紛れさせないためです。あと2つ数字を。期間が1年以上のときは、満了の1年前から6か月前までの間に「期間の満了により終了する」旨を通知しないと、終了を対抗できません。
通知の窓、普通借家と同じ幅やな。
幅は同じで、中身が「更新しません」ではなく「終わります」の確認である点が違います。もう1つ、借主側の非常口

居住の用に供する建物の賃貸借(床面積200㎡未満)において、転勤、療養、親族の介護その他やむを得ない事情により建物を生活の本拠として使用することが困難となったときは、賃借人は解約の申入れをすることができ、申入れの日から1か月を経過することによって終了する。

200㎡未満と1か月。……大家は更新なしで固められるけど、借主には抜け道を残したんか。
住む場所の話だからです。事業用の大きな物件は対象外。ここでも線は住むかどうかで引かれています。
なお、取り壊すことが明らかな建物については、取り壊すこととなる時に終了する旨を定められます(39条)。この特約は取り壊すべき事由を記載した書面で。さらに、一時使用のために建物を賃貸したことが明らかな場合には、今日の借家の規定はまるごと適用されません(40条)。
前回の「資材置場は借地やない」と同じ位置の話やな。入口で外れるやつ。
どの法律が働く場面かを最初に確かめる。前回と同じ作法です。

今日の持ち帰り

借家は期間の上限なし(民法604条は不適用・29条2項)。1年未満と定めると、期間の定めがない賃貸借とみなされる(29条1項)。 更新拒絶の通知は、満了の1年前から6か月前までの間。しなければ法定更新され、更新後は期間の定めがないものになる(26条1項)。通知しても、満了後の使用継続に遅滞なく異議を述べなければ更新扱い(同2項)。 期間の定めがない場合、大家からの解約申入れは6か月で終了(27条1項)。更新拒絶にも解約申入れにも正当事由が必要(28条)で、立退料は補完材料借主からの解約は民法どおり3か月・正当事由不要対抗要件は建物の引渡し(31条)。賃借権の登記は不要。反する不利な特約は無効(37条)。 造作買取請求権は、賃貸人の同意を得て付加した造作について時価で請求できる(33条)。ただし特約で排除でき、その特約は有効借地の建物買取請求権が外せないのと対照。債務不履行解除では請求できず、代金のために建物を留置することもできない(判例)。 借賃増減請求は将来に向かってのみ。増額しない特約は有効、減額しない特約は無効。もめている間は相当と認める額を払えばよく、差額には年1割(32条)。 転借人には終了の通知が必要で、通知から6か月(34条)。ただし債務不履行解除には適用なし(判例)。 相続人なしに死亡した居住用建物の賃借人の同居者(事実上の夫婦・養親子)は権利義務を承継。1か月以内の反対の意思表示で拒める(36条)。 定期建物賃貸借は、書面で契約+別個の書面で事前説明。説明を欠くと更新がない旨の定めが無効。期間の制限なし。1年以上なら満了の1年前〜6か月前に終了通知。居住用200㎡未満はやむを得ない事情で解約申入れ可・1か月で終了(38条)。

締めの3問。
こい。
第1問。「期間を6か月と定めた建物の賃貸借契約は、期間の定めが無効となり、1年の賃貸借となる」。
×。1年に直されるんやない、期間の定めがない賃貸借とみなされるんや。……借地は「20年と定めたら30年」で年数に直されるけど、借家は年数やなくて型が変わる。ここが引っかけやな。
直し先が違います。第2問。「建物の賃借人は、賃借権の登記を備えなければ、その後建物を取得した者に賃借権を対抗することができない」。
×。引渡しがあれば対抗できる。登記は要らん。……借地のほうは自分名義の建物の登記が要ったから、そこを混ぜてくるんやろ。
混ぜてきます。第3問。「建物の賃貸人の同意を得て賃借人が付加した造作について、造作買取請求をしない旨の特約を定めても、賃借人に不利であるから無効である」。
×。33条は強行規定に入ってへんから、その特約は有効。……借地の建物買取請求やったら○になるんやな。片方だけ外せる。
外せる/外せないの一点で作れる問題です。3問とも取れました。今日は**「借地の数字と道具を、そのまま持ち込まない」**が全部でした。
30年と引渡し、6か月と造作。並べて置いとくわ。
次回は第26回、「相続とマンションと登記を、頻出だけ」──相続・区分所有法・不動産登記法をまとめて回します。P2の最終回です。それぞれ単体では深い沼なので、出るところだけを抜いて、沼には入りません
3つ一気か。詰め込みやな。
深さより、出題される形だけを取りにいきます。……進行の報告を。この記事は予定日から5日ずれました。前回まで1日差で保っていた分が、ここで開いています。
現状維持が崩れたか。
崩れました。次回でP2を閉じて、そこからP3(法令上の制限・税)に入ります。順番は変えません。ずれは本数を削らずに畳みます。

この連載は、受験生Rayと伴走AI「クロ」の学習記録です。僕は宅建の専門家ではありません。学習には必ず最新年度のテキストと一次ソースを確認してください。間違いに気づいたら、直したことも含めて次の回で書きます。