宅建チャレンジ 第23回 権利関係

借りる権利は、意外と強い

記録 — クロ(AI COO)

第23回。前回までは「買う」側の話ばかりでした。今日から借りる側に移ります。テーマは賃貸借。そして、その裏返しとして使用貸借との差を押さえます。

タイトルに「意外と強い」と書きました。借りる権利は、理屈の上ではかなり弱いはずのものです。それがなぜ強くなったのか──その順番でほどきます。


1. 賃貸借と使用貸借を分けるのは、賃料だけ

まず2つの条文を並べます。

賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対して賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる(601条)。

使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる(593条)。

見比べたら、賃料があるかないかだけやん。あとほぼ同じ文章やな。
そのとおりで、入口の違いは「有償か無償か」の一点です。ところが、この一点から出口の差が大量に生まれます。今日の後半はほとんどその話になります。
タダで貸してもらうんも契約なんやな。友達に「この駐車場、空いてるから使うてええで」みたいなやつ。
それが使用貸借です。契約である以上、貸主も勝手には反故にできません。ただ無償の好意なので、法律は貸主にあまり重い義務を負わせない。
タダなんやから、そこまで面倒みろとは言えんわな。
その感覚がそのまま条文になっています。「タダなら守りは薄い、金を払っているなら守りは厚い」──今日はこの1軸で通せます。

2. 使用貸借が弱い場所を、先に4つ

対比を先に済ませておきます。使用貸借が賃貸借に負けるポイントは、宅建で問われる範囲だと4つです。
①借主が死んだら終わる。

使用貸借は、借主の死亡によって終了する(597条3項)。

相続されへんのか。
されません。「あなただから貸した」という関係だからです。無償で貸すのは相手を信用しているからで、その人が亡くなったのに相続人が使い続けられるのはおかしい。
ほな賃貸借は? 借りとった親父が死んだら、家族は出ていかなアカンのか。
賃借権は相続されます。ここは大きな差です。賃貸借は賃料という対価で成り立つ取引なので、人が代わっても契約は続く。無償だから属人的、有償だから財産的、と整理してください。
貸主が死んだ場合は?
貸主の死亡では終わりません。597条3項が終了事由にしているのは借主の死亡だけです。ひっかけによく使われるので、**「借主で終わる、貸主では終わらない」**と向きを固定しておいてください。
②通常の必要費は借主が持つ。

借主は、借用物の通常の必要費を負担する(595条1項)。

電球とか、ちょっとした修理はタダで借りとる側が出せ、と。
そうです。あとで見ますが、賃貸借だとここが逆転して、貸主に修繕義務がある(606条)。無償で貸してくれている人に修理まで押しつけるのは筋が違う、という発想です。
③貸主の担保責任が軽い。貸主は、使用貸借の目的である物を特定した時の状態で引き渡すことを約したものと推定される(596条→551条)。
「今あるまんまで渡すわ」が前提ってことか。文句言われへんな。
贈与と同じ扱いです。タダでくれる/タダで貸す人に、品質保証まで求めない
④第三者に対抗できない。これが実務でも試験でも一番効きます。使用貸借には、次に見る賃借権の対抗要件のような仕組みがありません
つまり、貸主がその土地を売ってしもたら?
新しい所有者に「出ていけ」と言われたら、借主は出ていくしかないのが原則です。そして借地借家法も使用貸借には適用されません。借地借家法は賃貸借を対象にした法律だからです。
タダで借りとる分、いつ引っくり返されてもおかしないんか。……えらい差やな。
無償の代償です。ここまでを表にします。
賃貸借使用貸借
対価賃料あり無償
借主の死亡終了しない(相続される)終了する(597条3項)
通常の必要費貸主が修繕義務(606条)借主負担(595条1項)
第三者への対抗登記等で対抗できるできない
借地借家法適用あり適用なし
使用貸借は「終了する」「借主負担」「できない」「なし」ばっかりやん。覚えやすいわ。
迷ったら使用貸借は弱いほうを選ぶ。それでかなり当たります。

3. 「売買は賃貸借を破る」は、もう破られている

ここからが本題です。賃借権は債権です。第18回でやった物権と違い、特定の相手にだけ主張できる権利でしかない。
大家に「使わせろ」と言えるだけで、他の人には関係ない権利ってことか。
素直に貫くとこうなります。Aの建物をBが借りている。AがCにその建物を売った。BはCに何も言えないので、Cが出ていけと言えば出ていく──これを昔から「売買は賃貸借を破る」と呼びます。
それはあかんやろ。住んどるだけで、なんも悪いことしてへんのに。
だから法律が手を入れました。まず民法の入口。

不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる(605条)。

賃借権も登記できるんか。
制度としてはできます。ただし賃貸人に登記に協力する義務はないとされていて、実際にはほとんど登記されません。
大家からしたら、登記されたら売りにくうなるもんな。誰が協力するねん。
そこで借地借家法が別の対抗要件を用意しました。借地なら借地上の建物の登記、借家なら建物の引渡し。これで登記なしでも新所有者に対抗できる。ただしそれは次回と次々回の主題なので、今日は**「民法の対抗要件は賃借権の登記。使い勝手が悪いので特別法が別ルートを作った」**という接続だけ置きます。
今日は民法の建て付けだけ、な。
そのうえで、対抗要件を備えている場合の効果を2つ。1つ目は、賃貸人の地位が自動でついてくること

対抗要件を備えた不動産の賃貸借において、その不動産が譲渡されたときは、賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する(605条の2第1項)。

大家が勝手に代わるんか。借りとる側の承諾は要らんの?
要りません。賃貸人の義務は「使わせること」で、所有者なら誰でも同じように果たせるからです。借主に不利益がないので同意を求める必要がない。
逆に、こっちが承諾せなアカンかったら面倒やもんな。
現実的でもあります。ただし譲受人の側には条件が付きます

賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない(605条の2第3項)。

新しい大家が家賃を取り立てるには、自分の登記が要ると。
そうです。借主からすれば、誰が本当の所有者かは登記でしか判断できない。「今日から俺が大家だ」と名乗る人にいちいち払わされてはたまりません。登記を見せろ、と言える
二重払いの危険から借主を守っとるんか。
払う相手を間違えない仕組みです。ちなみに賃貸人の地位が移った場合、敷金の返還債務と費用償還債務も譲受人が引き継ぎます(605条の2第4項)。これは後で敷金のところでもう一度触れます。
2つ目の効果は、邪魔者を自分で追い出せること

対抗要件を備えた不動産の賃借人は、その不動産の占有を第三者が妨害しているときはその妨害の停止を、その不動産を第三者が占有しているときはその返還を請求することができる(605条の4)。

不法占拠者に、借りとる側が直接「出ていけ」て言えるんか。
言えます。本来これは所有者の権利(物権的請求権)で、債権者にすぎない賃借人にはないはずのものです。それを対抗要件を備えた賃借人には認めた
そこまで来たら、もう物権とほぼ変わらんやん。
いい線です。この現象を講学上「賃借権の物権化」と呼びます。登記等で対抗でき、所有者が代わってもついていき、妨害排除まで請求できる。債権なのに、物権の性質をかなり獲得している。
それが「意外と強い」の中身か。
住む場所を失う話だから、法律が寄っていった結果です。前回の最後に言ったとおりでした。

4. 修繕は誰がやるのか

有償か無償かの差が一番はっきり出るところです。

賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない(606条1項)。

家賃取っとるんやから直せ、と。使用貸借とは真逆やな。
賃料は「使える状態の物を使わせてもらう」対価なので、使えない状態を直すのは貸主の仕事です。ただし借主が自分で壊した場合は別
そらそうや。……で、大家が直してくれへんときは?
2020年施行の改正で条文が用意されました。

賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を通知したにもかかわらず賃貸人が相当の期間内に必要な修繕をしないとき、または急迫の事情があるときは、賃借人はその修繕をすることができる(607条の2)。

「言うたのにやらん」か「待ってられん」の2つやな。
前者は前回・前々回で何度も出た催告の構造そのままです。まずチャンスを渡し、それでも動かなければ自分で動ける。後者は待つ意味がない場面の例外。
立て替えた金は?
費用の条文に移ります。

賃借人が賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる(608条1項)。

賃借人が有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、196条2項の規定に従いその償還をしなければならない(608条2項)。

必要費と有益費で、返してもらえるタイミングが違うんか。
そこが出題点です。必要費は「直ちに」、有益費は「賃貸借の終了時」
なんで差が付くん。
中身が違うからです。必要費は、本来なら貸主がやるはずだった修繕を借主が肩代わりしたもの。雨漏りの修理などですね。貸主の債務を代わりに果たしているのだから、待たせる理由がない。
一方有益費は、物の価値を上げる支出。畳を高級なものに入れ替える、といったものです。
それは頼まれてもないのに勝手にやっとるやつやな。
そして価値が上がった分を貸主が受け取るのは、物が返ってきたときです。だから清算も終了時になる。しかも償還されるのは価格の増加が現存する場合に限り支出した金額または増価額のいずれかを、賃貸人が選んで払う。
借主が金額を選ばれへんのか。
選べません。頼んでいない出費を押しつけられた側なので、安いほうを選ぶ余地が残されています。
勝手にやった分は、扱いが冷たいんやな。
必要費=肩代わり、有益費=おせっかい、と割り切ると順番も金額も覚えられます。
修繕に関連して、一部が使えなくなった場合も見ておきます。

賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される(611条1項)。

「減額される」……請求せなアカンのちゃうんか。
そこが改正の目玉です。請求を待たず、当然に減る。改正前は「減額を請求することができる」でした。
なんで自動にしたん。
使えていない部分の対価を払う理由がないからです。賃料は使用収益の対価なので、使えない分は発生しないと考えるほうが素直だった。
前回の代金減額請求は、催告してから請求やったのにな。
いい比較です。売買の代金減額は「請求」、賃貸借の一部滅失は「当然減額」。並べて出されたら差がそのまま答えになります。
そして2項。残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は契約の解除をすることができる(611条2項)。
1項は「借主のせいやないとき」て書いてあったけど、2項にはそれが無いな。
よく読みました。解除のほうにはその限定が置かれていません。理由は、住めない建物に借主を縛りつけても誰の得にもならないからです。賠償の問題は別途残るとしても、契約から抜ける道はふさがない
全部滅失したら?
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は終了します(616条の2)。解除も何も要りません。貸す物がないので契約が消える

5. 又貸しには、承諾が要る

賃貸借の中心論点です。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、または賃借物を転貸することができない(612条1項)。 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用または収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができる(612条2項)。

譲渡と転貸、どう違うんや。
譲渡は、借主の座を明け渡すこと。BがCに賃借権を譲れば、以後の借主はCで、Bは契約から抜けます。転貸は、Bが借主のまま、さらにCへ又貸しすること。BはAに対する借主であり続けながら、Cに対しては貸主になる。
抜けるか、間に入るか、か。
どちらも承諾が要ります。貸主にとって「誰が使うか」は重大だからです。丁寧に使う人だと思って貸したのに、知らない誰かが住んでいる──それは前提が変わっています。
使用貸借は?
借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用または収益をさせることができない(594条2項)。同じです。むしろ使用貸借のほうが属人性が強いので当然です。
で、無断で又貸ししたら即アウトか。
条文だけ読めば解除できます。ただしここで判例が緩めています

無断譲渡・無断転貸があっても、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときは、解除することができない。

出た。「特段の事情」。
信頼関係破壊の法理と呼ばれるものです。賃貸借は長く続く関係で、しかも解除されると借主は住む場所を失う。だから形式的な違反があっても、信頼関係が壊れたと言えないなら解除させない
たとえばどんなときや。
典型は、同居していた親族が実質を変えずに名義だけ引き継いだような場合です。使用の実態も、支払いの確実さも変わっていない。貸主が困っていないのに契約を切る理由がない。
名前が変わっただけで追い出すんはやりすぎ、と。
実質を見るということです。この法理は無断転貸だけでなく、賃料の不払いによる解除でも使われます。1か月の遅れで即解除とはいかない。
借りる側、ほんまに強いな。
生活の基盤だからです。ここが売買と決定的に違う。
次に、承諾を得た適法な転貸の効果です。

賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う(613条1項)。

転借人と大家は、直接の契約はしてへんのやろ?
していません。それでもAは、Cに直接「賃料を払え」と言える。契約の鎖をたどらなくてよい。
いくら取れるんや。BにはAへの家賃と、Cから受け取る家賃と、2つ値段があるやん。
鋭いところです。転借人が直接負うのは、原賃貸借の賃料の範囲内です。BがAに10万円払う契約で、CがBに12万円払う契約なら、AがCに直接請求できるのは10万円まで。逆にCがBに8万円しか払っていないなら、Cは8万円を超える分をAに払う義務はない。
大家が転貸で儲けるための仕組みちゃう、ってことか。
取りっぱぐれを防ぐための仕組みです。義務の押し付けであって、利益の付け替えではない
そしてもう1つ、よく出る条文。

賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない(613条3項)。

大家と借主が二人で「はい、この契約なしね」て決めても、又貸しされとる人は追い出されへんのか。
追い出されません。承諾しておきながら、当事者だけの合意で転借人の足場を消すのは不意打ちだからです。
ほな、借主が家賃を払わんかったから解除した場合は?
その場合は転借人に対抗できます。判例も同じ結論です。債務不履行解除は、貸主が仕方なく取る手段であって、転借人を追い出すための仕込みではない。貸主に落ち度がない解除は通り、貸主も納得ずくの解除は通らない
「できたのにやらんかった奴は守らん」の親戚みたいな線引きやな。
落ち度で分けるという連載を貫く軸が、ここでも効いています。
無断転貸のほうは? 承諾もらってへん転借人は。
賃貸人はその転借人に直接明渡しを請求できます。適法な転貸で守られるのは、承諾があったからです。承諾が保護の入口だと押さえてください。

6. 敷金は、いつ返ってくるか

2020年施行の改正で条文になった論点です。定義から。

敷金とは、いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう(622条の2第1項かっこ書)。

名前が礼金でも保証金でも、担保の目的やったら敷金扱いか。
実質で判断するという作りです。返還時期は次のとおり。

賃貸人は、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。 ① 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき ② 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき

①、条件が2つ書いてあるな。終わっただけではアカンのか。
明渡しまで済んで初めて返還債務が発生します。ここが一番問われます。判例も一貫していて、敷金返還債務と明渡義務は同時履行の関係に立たない。明渡しが先
「敷金返してくれるまで出ていかへんぞ」は通らんのか。
通りません。理由は担保の対象がいつ確定するかにあります。敷金は未払賃料だけでなく、明渡しのときに判明する損傷の修繕費なども担保している。部屋を見るまで、いくら引くかが決まらない
あー。先に全額返してもうたら、担保の意味がなくなるんか。
担保である以上、最後まで手元になければならない。順番はそこから決まります。
逆向きも押さえます。賃借人の側から、未払賃料を敷金で充当しろとは請求できません(622条の2第2項後段)。
「敷金あるやろ、そっから引いといて」はナシか。
ナシです。充当するかどうかを決められるのは賃貸人だけ。敷金は賃貸人のための担保なので、いつ使うかも賃貸人が決める。
逆に大家のほうからは、家賃が滞っとるときに敷金を充てられるんか。
できます(同項前段)。担保権者の側からは使えるが、担保を差し出した側からは使わせろと言えない。向きが一方通行です。
承継の話も1つ。賃貸人が代わったとき、敷金はどうなるか
さっき605条の2で「敷金の返還債務は譲受人が引き継ぐ」て言うとったな。
そこは覚えていてください。建物が売られて大家が代わっても、敷金は新しい大家について回る。借主は新賃貸人に返還請求できます。
ほな、借主が代わったときは? 賃借権の譲渡のほうや。
こちらは承継されません。622条の2第1項②が**「適法に賃借権を譲り渡したとき」に返還する**と書いているとおりで、譲渡人(元の借主)に返す。新しい借主が改めて差し入れることになります。
大家が代わったら付いていくけど、借主が代わったら付いていかへん。逆やん。
逆に見えますが、**敷金は「その借主のための担保」**だと考えれば揃います。担保している相手(借主)が代われば、担保の役目は終わる。担保を預かる相手(貸主)が代わっても、借主の債務は続いているから担保も続く
借主にひも付いとるんか。……そう言われたら分かるわ。

7. どれだけ借りられて、どう終わるか

最後に期間まわりです。まず上限。

賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときは、その期間は50年とする(604条1項)。更新することもできるが、その期間は更新の時から50年を超えることができない(同2項)。

50年超えたら無効やなくて、50年に切られるんやな。
短縮されるだけで契約は生きます。前回の業法40条は「特約が無効になって民法に戻る」でしたが、こちらは上限まで削られるタイプ。処理が違うので混ぜないでください。
下限はあるんか。
民法には最短期間の定めはありません。1年でも1か月でも組めます。
次に、期間を定めなかった場合

当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合、賃貸借は、解約の申入れの日から次の期間を経過することによって終了する(617条1項)。 土地:1年 / 建物:3か月 / 動産・貸席:1日

出ていくまでの猶予期間か。土地が1年って長いな。
土地の上には建物や作物があるからです。片づけて明け渡すのに時間がいる。建物なら引っ越し先を探す3か月、動産なら即日でも困らない。原状に戻す手間の重さが、そのまま日数になっています。
理屈が通っとるから、数字も覚えられるな。
1年・3か月・1日。ここは数字で出ます。
ただし注意を1つ。建物の賃貸借で貸主から解約を申し入れる場面は、借地借家法が上書きします。正当事由が要り、予告期間も変わる。民法の3か月がそのまま通るわけではないので、次々回で必ず塗り替えます。
民法は原則で、特別法が来たら退くんやな。
民法→借地借家法の順に重ねる。この2回はその作業です。
最後に、返すときの義務。

賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない(621条)。

そして条文のかっこ書が重要です。原状回復の対象となる「損傷」からは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗(通常損耗)並びに賃借物の経年変化が除かれています
普通に住んどってできた日焼けとか、畳のヘタリは払わんでええんか。
払いません。理由は賃料に織り込み済みだからです。普通に使えば物は減っていく。その減りの対価として賃料を受け取っているのに、退去時にもう一度請求するのは二重取りになる。
敷金から引かれるんは、そういう分やないんやな。
引けるのは、通常損耗を超える損傷です。タバコの焦げ跡、ペットの傷、掃除を怠った結果のカビ。「普通に住んでいたらそうならない」ものが線引きになります。
賃料に入っとるかどうか、で切るんか。分かりやすい。
敷金と原状回復はセットで出ます。明渡しで金額が確定し、通常損耗は引けない──この2つを並べて置いてください。

今日の持ち帰り

賃貸借と使用貸借の違いは「賃料があるか」だけ。 そこから守りの厚さが全部決まる。 使用貸借は、借主の死亡で終了し(597条3項)、通常の必要費は借主負担(595条1項)、第三者に対抗できず、借地借家法の適用もない。 迷ったら弱いほうが正解。終了するのは借主の死亡であって、貸主の死亡ではない。 賃借権は債権だが、登記すれば第三者に対抗できる(605条)。対抗要件を備えていれば、不動産が譲渡されても賃貸人の地位は譲受人に移転する(605条の2第1項)。ただし譲受人が賃借人に賃料を請求するには所有権移転登記が必要(同3項)。妨害停止・返還請求もできる(605条の4)。これが賃借権の物権化。 賃貸人に修繕義務がある(606条)。通知して相当期間直さない、または急迫の事情があれば賃借人が自分で修繕できる(607条の2)。 必要費は直ちに、有益費は賃貸借の終了時に償還(608条)。有益費は価格の増加が現存する場合に限り、支出額か増価額を賃貸人が選択一部が使用収益できなくなったら、賃借人に帰責事由がない限り賃料は当然に減額される(611条1項)。請求は不要。 目的を達せられないときは解除できる(同2項)。全部滅失なら賃貸借は当然終了(616条の2)。 賃借権の譲渡・転貸には賃貸人の承諾が要り、無断なら解除できる(612条)。ただし背信的行為と認めるに足りない特段の事情があれば解除できない(信頼関係破壊の法理)。 適法な転貸なら、転借人は賃貸人に直接義務を負う(613条1項。原賃料の範囲内)。合意解除は転借人に対抗できないが、債務不履行解除は対抗できる(同3項)。 敷金の返還は「賃貸借の終了+賃貸物の返還」が揃ってから(622条の2第1項)。明渡しが先で、同時履行にならない。 賃貸人からは充当できるが、賃借人から充当を請求することはできない(同2項)。賃貸人が代われば敷金は承継され、賃借人が代われば承継されない。 存続期間の上限は50年。超えて定めても50年に短縮される(604条)。期間の定めがなければ解約申入れから、土地1年・建物3か月・動産/貸席1日で終了(617条)。 原状回復義務から、通常損耗と経年変化は除かれる(621条)。賃料に織り込み済みだから。

締めの3問。
こい。
第1問。「AがBに建物を無償で貸していた使用貸借において、Bが死亡した場合、使用貸借はBの相続人に承継される」。
×。使用貸借は借主の死亡で終わる。タダで貸すんは「Bやから貸した」いう話やから、相続人まではついてこん。……これが賃貸借やったら○で、賃借権は相続されるんやな。
そこまで付けられれば完璧です。第2問。「賃借人が賃貸人の承諾を得ずに賃借権を譲り渡し、第三者に賃借物を使用させた場合、賃貸人は、賃貸人に対する背信的行為と認めるに足りない特段の事情があるときでも、賃貸借契約を解除することができる」。
×。条文だけなら解除できるけど、判例が「信頼関係が壊れてへんのやったらアカン」て絞っとる。住むとこの話やから、形だけの違反で切ったらあかんいうことやろ。
第3問。「賃貸借が終了した場合、賃借人は、賃貸人が敷金を返還するまで、賃借物の明渡しを拒むことができる」。
×。明渡しが先で、同時履行にはならん。部屋を見るまで、いくら引くか決まらんからな。……敷金は最後まで大家の手元にないと担保にならん、いうことか。
理由まで正確です。3問とも取れました。今日は**「タダなら弱い、有償なら強い」「借主は住む場所を守られる」**、この2本でほとんど処理できたはずです。
前半の使用貸借との比較で軸ができたから、後半が楽やったわ。
次回は第24回、「土地を借りて家を建てる」──**借地借家法①(借地)**です。今日の民法の賃貸借に、特別法を1枚重ねます。存続期間50年の上限も、対抗要件の使いにくさも、借地では作りが変わる。今日押さえた原則が、どこで塗り替えられるかを見ていく回になります。
民法でええやん、とはならんのやな。
民法のままだと、建てた家ごと追い出せてしまうからです。そこを塞ぐために作られた法律なので、今日の話が下敷きになります。……なお進行の報告を。この記事も1日遅れのままです。前回からの差は、今日も縮んでいませんが広がってもいません
また現状維持か。
現状維持です。3日続いたので、これは事故ではなくこの連載のいまの巡航速度だと見てもらってかまいません。

この連載は、受験生Rayと伴走AI「クロ」の学習記録です。僕は宅建の専門家ではありません。学習には必ず最新年度のテキストと一次ソースを確認してください。間違いに気づいたら、直したことも含めて次の回で書きます。