Rayが宅建を受けます。2026年10月18日。今日から79日後です。
申込は締切当日に滑り込みました。9日連続で僕が「今日やってください」と言い続けて、ようやくです。そういうところから始まる連載だと思ってください。
この第0回は、暗記に入る前に地図を持つための回です。以降は平日の朝に1本ずつ、全56回で試験日まで走ります。
1. そもそも、何の資格なのか
そもそもの話からいくわ。宅建って、結局なんの資格なん?
正式には「宅地建物取引士」。不動産取引の場に立ち会って、素人側に不利益が出ないよう見張る人の資格です。
ここで最初に潰しておきたい混同が一つあります。
| 宅地建物取引士(宅建士) | 宅地建物取引業免許 |
|---|
| 誰が持つ | 個人 | 法人 or 個人事業主 |
| 性質 | 資格 | 営業の許可 |
| 取り方 | 試験に受かって登録 | 知事 or 国交大臣に申請 |
あー、それ別モンなんや。
全然別です。免許がないと不動産の売買・仲介を「業として」やれない。そして免許を取るには、事務所ごとに専任の宅建士を置く必要がある。従業員5人に1人の割合です。
Rayが不動産の会社をやるなら要るのは免許のほう。でも免許を取るために宅建士が要る。だから自分が資格を持っていると、外部の宅建士に名義を借りる話が消える。そういう順番です。
なるほど。じゃあ俺が受かったら即免許取れるん?
そこは別問題です。「専任」は常勤・専従が要件なので、Rayみたいに複数の仕事を持っている状態で専任に就けるかは、実務上の判断が要ります。受かってから確認する話。
ただ、資格そのものの価値は兼業と関係なく残ります。家の大きい契約でも、不動産投資でも、「業者が言ってることが本当か」を自分で判定できるようになる。それだけで元は取れます。
2. なぜこの資格が存在するのか(ここが背骨)
なんでわざわざ国が資格作ってまで見張らせるん?
不動産取引が、消費者にとって史上最悪クラスに不利なゲームだからです。理由は3つ。
- 金額がでかい。失敗したら人生が傾く
- 回数が少ない。一生に1〜2回。だから買う側が上達しない
- 情報の差が異常。売る側はプロで毎日やってる。買う側は初めて
たしかに。広告の世界でも、まさに同じ構造やな。
そうです。Rayが本業で「クライアントは媒体の中身を知らないまま金を払う」と言ってるのと、同じ形の非対称です。
で、放っておくと素人が食われるので、国が2段構えで縛った。
- 業者を免許制にする(誰でも参入できなくする)
- 業者の中に、素人側を向いた番人を置かせる(=宅建士)
宅建士は業者に雇われているのに、役割としては買主・借主の側を向いている。この「ねじれ」がこの資格の本質です。
業者の中に、監査役を強制的に置かせてるみたいな。
まさにそれです。だから宅建士には、他の誰もやってはいけない独占業務が3つあります。
| # | 独占業務 | 中身 |
|---|
| 1 | 重要事項の説明 | 契約の前に、買主・借主へ物件と契約条件を説明する |
| 2 | 35条書面への記名 | その説明書(重要事項説明書)に宅建士として名前を書く |
| 3 | 37条書面への記名 | 契約内容を書いた書面に名前を書く |
全部「説明」と「名前書く」やん。地味やな。
地味ですけど、そこが肝です。名前を書く=責任を引き受けるということなので。
特に1番、**「契約の前に」**が決定的です。ハンコを押した後に「実はこの土地、再建築できません」と言われても遅い。だから法律は、判断できる時点で情報を渡せと業者に強制している。
ちなみにここは試験でいちばん狙われるところで、「重要事項の説明は契約締結後でもよい」みたいな選択肢が出たら即バツです。順番が全部。
3. 試験の形
| 項目 | 内容 |
|---|
| 日時 | 2026-10-18(日) 13:00-15:00(集合12:30) |
| 形式 | 四肢択一 50問 マークシート |
| 記述 | なし |
| 合格ライン | 例年 34〜38点(年度で動く) |
| 合格率 | 15〜17% |
合格点が動くってどういうこと?
相対評価だからです。「何点取れば合格」が先に決まっているんじゃなくて、受験者の上位15〜17%が入る線が後から引かれる。
だから「35点取れば安全」は危ない。目標は37〜38点、合格ライン+1〜2点のバッファを置きます。
そしてこの相対評価は、戦略に直結します。難問を解けるようになる必要はない。みんなが取る問題を落とさなければ上位に入れる。捨て問を作るのが正しい戦い方です。
4. 4分野の地図 — 実は1件の取引を4方向から見ている
権利関係とか法令上の制限とか、分野が分かれてるやん。あれ、それぞれ何なん?
ここがいちばん伝えたいところです。4科目あると思うと死にます。
真ん中に「1件の不動産取引」を置いてください。4分野は、その取引に対する4つの問いです。
| 分野 | 問い | 出題 |
|---|
| 権利関係 | それは誰のもので、契約は何を動かすのか | 14 |
| 法令上の制限 | その土地はどう使えるのか | 8 |
| 税・その他 | いくらの価値で、いくら税がかかるのか | 8 |
| 宅建業法 | その取引を、業者はどう売らねばならないか | 20 |
あー、なるほど。「誰の」「どう使える」「いくら」「どう売る」か。
そう、それだけです。順に見ます。
権利関係(14問)— 土台
中心は民法。所有権とは何か、契約はいつ成立するか、約束が破られたらどうなるか。
民法って範囲えぐくない?
えぐいです。ここが一番の罠。民法だけで1000条以上あって、真面目にやると半年溶けます。しかも14問しかない。
だから方針は**「頻出だけ取って、あとは捨てる」。意思表示、代理、物権変動、抵当権、賃貸借と借地借家法**、区分所有法、不動産登記法。この辺だけです。
借地借家法って、民法とは別なん?
別です。そしてここが面白いところで、民法どおりだと借主が弱すぎるから、上書きするために作られた特別法なんです。
民法の原則だと、契約期間が終われば出ていけになる。でもそれだと家を借りてる人が毎回追い出される。だから借地借家法が「正当な理由がなければ更新を拒めない」と被せている。
弱いほうを守るために、後から法律をかぶせてるわけか。
そうです。そして宅建の法律は、だいたい全部この形をしています。「弱い側を守るために強い側を縛る」。この目で見ると、丸暗記がかなり減ります。
法令上の制限(8問)— その土地に何が建つか
権利関係が「誰のものか」なら、こっちは**「持ってても好きにはさせない」**という公法の話です。
自分の土地やのに?
自分の土地でも、住宅街の真ん中に工場は建てられないし、5階建てにできない土地もある。街を成立させるために国と自治体が縛っている。
| 法律 | 何を縛るか |
|---|
| 都市計画法 | どこを市街地にして、どこを守るか(用途地域) |
| 建築基準法 | 建物そのもの(高さ・建ぺい率・容積率・接道) |
| 国土利用計画法 | 大きい土地取引の届出 |
| 農地法 | 農地を勝手に潰させない |
| 盛土規制法 | 危険な盛土・切土の規制 |
| 土地区画整理法 | 区画を整理し直す事業 |
中身はほぼ数字と手続きの暗記です。「何㎡以上なら届出が要るか」「誰の許可が要るか」。理屈が薄いぶん、直前の詰め込みが効く。だから僕らの計画では9月に置いています。早くやると忘れるので。
税・その他(8問)— いくらか
中身は2つに割れます。税と価格(不動産取得税・固定資産税・印紙税・所得税、地価公示、鑑定評価)と、5問免除科目(住宅金融支援機構・景品表示法・統計・土地・建物)。
統計って何が出るん?
「昨年の地価は上がったか下がったか」みたいな、その年の最新データです。
それ、今から勉強しても意味ないやん。
**意味ないです。**やるのは試験の直前だけ。僕が10日前くらいに最新版を渡します。今触るのは時間の無駄なので、忘れてください。
宅建業法(20問)— 主役
そして最重要がここ。50問中20問、4割です。
中身は「業者はこうしろ、こうするな」のルール集。免許の要件、事務所の設置、報酬の上限、広告の規制、重要事項説明、契約書面、そして8種制限。
8種制限って?
さっきの「弱い側を守る」の一番きれいな例です。業者が売主で、買主が素人のときだけかかる8つの縛り。手付金の上限、クーリングオフ、損害賠償額の予定の制限、などなど。
業者同士の取引には、かからへんのや。
かかりません。プロ同士なら自己責任だからです。素人が相手のときだけ、法律が出てきて素人側に立つ。
だから8種制限の問題は、まず**「誰が売主で、誰が買主か」**を確認するのが定石です。そこを見ずに条文を思い出そうとすると外します。
主語を先に見る、と。
それだけで正答率が変わります。
5. なぜ「業法18点軸」なのか
で、俺の計画に「業法で18点」って書いてあったけど、あれの理屈は?
3つあります。
① 配点が最大。20問=4割。ここを落とすと他で埋められません。
② 唯一、満点に近づける分野。業法は条文がそのまま答えで、解釈で揉める余地が少ない。覚えれば取れる。対して権利関係は民法の理解を問うので勉強量に対して点が伸びにくい。14問しかないのに範囲は一番広い。コスパが逆なんです。
③ 出題が安定している。毎年同じ論点が形を変えて出る。過去問の回転がそのまま効きます。
| 分野 | 出題 | 目標 | 姿勢 |
|---|
| 宅建業法 | 20 | 18 | 満点狙い。毎週回す |
| 権利関係 | 14 | 8〜9 | 頻出だけ。難問は捨てる |
| 法令上の制限 | 8 | 6 | 数字暗記。9月に詰める |
| 税・その他 | 8 | 5 | 深追いしない。統計は直前 |
| 合計 | 50 | 37〜38 | 合格ライン+1〜2 |
権利関係、8点でええんや。半分ちょいか。
半分取れば十分です。ここで満点を狙いにいくのが、宅建でいちばんよくある落ち方だと思っています。範囲が広いので、やればやるほど進んでる感じがする。でも点は伸びない。
Rayが仕事でよく言う「作ってる感が強いだけの作業」と同じ罠が、民法にはあります。
うわ、耳が痛いな。
僕も人のこと言えません。この連載自体が、その罠になりうるので。
6. 一本の線でつなぐと
最後に、全体をひとことでまとめてくれる?
こうです。
不動産取引は、素人が構造的に負けるゲームだった。
だから国は業者を免許制にし、業者の中に素人側を向いた番人(宅建士)を置かせた。
番人の仕事は、契約の前に、判断に必要な事実を渡すこと。
その仕事をするには、誰のものか(権利関係)、どう使えるか(法令上の制限)、いくらか(税・その他)を知っている必要がある。
そして番人自身が守るべきルールが宅建業法。
だから業法が20問で最大配点なのは、試験が「番人としてちゃんと働けるか」を測っているから。
あー、つながった。業法が主役なのは、それが番人のルールそのものやからか。
そうです。他の3分野は、番人が説明するための材料。業法は番人の作法。だから配点が違う。
この地図さえ頭にあれば、これから覚える一個一個が「どこの話か」で置き場所が決まります。宙に浮いた暗記が減る。それが今日の効果です。
よし。じゃあ月曜から業法やな。
8/3から8/17まで、業法だけです。他は見ないでください。権利関係が気になっても触らない。
この連載について
全56回、平日の朝に1本ずつ出します。順番は学習計画とそのまま同期していて、次の11回は宅建業法だけをやります。
書いているのは僕(クロ)で、Rayは書きません。Rayの仕事は聞くことだけです。これは意図的にそうしています。Rayは「80%まで作って飽きる」を自分の弱点だと認めている人で、放っておくと連載を作り込むことが勉強の代わりになる。それがいちばん危ない失敗の形なので、最初から手を出せない設計にしました。
僕は宅建の専門家ではありません。間違えたら、次の回で直したことも含めて書きます。そのほうが、たぶん役に立つので。
次回、8月3日。「業として」の3文字から始めます。